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  • 主席研究員 玉置 実
  • No.94

県境の市町ならではの苦労

6月号の特集「中部横断自動車道の開通効果を考える」で、開通によってさまざまな影響を受ける静岡市、富士宮市、山梨県の南部町、身延町を取材した。この四つの自治体は、他県に隣接する、いわゆる「県境の市町」である。
これまでも神奈川県と山梨県に接する小山町や、愛知県と接する湖西市を訪問することがあったが、静岡県の施策の一環としてのヒアリングやグローバル企業への取材が多かったことから、隣県との関係性に着目する機会は少なかった。今回の取材を通じて、県境に接する自治体には、立地ならではの苦労が多いことに気づいた。
まず、生活面である。県境の自治体の生活圏や経済圏は、同一県内で完結することは少なく、他県にまたがることが多い。南部町では、"本格的"な買い物の場合、静岡市内の大型小売店を利用することが多い。また、静岡市内や富士宮市内の職場、高等学校に通勤・通学するケースも珍しくない。一方、新聞やテレビは、県境で分かれており、県外の職場や学校周辺の情報が十分に入手できないケースがあるという。
行政活動にも影響がある。新制度や新事業が導入される場合、国の説明会は、県単位で開催されることが多い。細かい運用が自治体に任されている場合は、近隣市町の担当者が情報交換してから実施することになるが、県境の自治体の場合は、同一県内だけでなく隣県の市町とも調整をしなければならない。ある自治体では、他県の会議にオブザーバーとして参加し、情報を得ているという。
また、企業活動はどうか。たとえば小山町は、工業団地や物流団地造成など活発に地域開発が進められており、立地する企業にとって、労働力確保は最大の課題である。しかし、隣接する神奈川県の最低賃金は983円と静岡県の858円と比べて125円も高く、小山町で人手を確保するためには、神奈川県の賃金水準並みの待遇が最低でも求められる。町内に立地する企業は、コスト負担が増している。
県境の自治体の多くは山間部に位置する。都市部と比べ人口減少が激しく、厳しい状況に置かれている。一方、県全体の活力維持には、これまで以上に県境を超えた交流が大切になってきている。
昨年、南部町では、中部横断自動車道の開通に合わせて整備した「道の駅なんぶ」に、防災倉庫を併設した。有事の際、相互の県に緊急物資を配送する物流拠点として活用するためである。他県の取組みながら、防災体制の充実は、静岡県として心強く有難い活動でもある。
県外とのゲートウェイとなる県境の自治体の魅力が増せば、県全体の吸引力や魅力もさらに増すこととなる。県境の自治体のあり方に、目を向ける時期が来ている。

投稿者:主席研究員 玉置 実|投稿日:2019年07月01日|

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