羅針盤

ホーム >羅針盤

  • 主席研究員 川島康明
  • No.

老舗企業に学ぶ

団塊世代の経営者が70代に達し始める中、経営課題として「事業承継」がクローズアップされている。当所のアンケート調査によると、経営者が60歳以上の県内企業のうち、約4割で後継者が決まっておらず、地域における雇用の場の喪失や活力低下につながる恐れがある。
このテーマを考える時、いつも頭に浮かぶのが「老舗企業」の存在である。100年以上にわたって事業を存続する老舗企業は、全国に3万3,069社、静岡県内には1,108社(全国7位)が立地している(東京商工リサーチ「老舗企業調査」)。さまざまな取材でこうした企業を訪問する機会があるが、"長寿の秘ひけつ訣"には共通点があることに気付く。
まず、経営上"立ち返るべき価値基準"が後継者にしっかりと承継されている点である。取り扱う商品が変わっても豊かな食文化への寄与を第一とする"ぶれない理念"を持つ卸売事業者。快適な住環境の創造を掲げ、害虫駆除から改築や新築住宅に領域を広げている企業などがある。従業員がトラブルに遭遇しても、拠るべき価値基準が明確ゆえに適切に行動でき、それが取引先からの信頼を得ることにつながっている。
第2に、オンリーワン製品を提供するなど、"価格決定力を持つ"ことができる領域を見出して収益の源泉を確保しつつ、全力で財務基盤を維持してつぶれない企業体質を維持している、いわゆる"身の丈にあった経営"である。
第3に、比較的規模の大きな老舗企業では、経営上、"変えるべきもの""変えてはいけないもの"を明らかにしている点も見逃せない。たとえば、コア技術を研けんさん鑚しつつ事業領域を次々に変えて世界トップシェアを握る部品メーカー。地域との関わりや製法はかたくなに守りつつ、食生活の変化を鋭敏に感じ取り市場を広げてきた食品メーカーなどが挙げられる。
さらに4つめとして、競争力の源泉であるヒトについても、"従業員が長く安心して勤められる職場づくり"がなされているケースが多い。その結果、企業への忠誠心の高い番頭的な人材が育ちやすく、従業員全体が会社への愛着を増し、親・子・孫が3代にわたって勤務している企業もある。いわば「働き方改革」が実践されていることで、深刻化する人手不足の状況下でも採用は比較的安定しているようだ。
こうした長寿の秘訣から、企業活動を巡る環境変化が激しい今こそ、老舗企業の考え方を参考にするべきだと改めて思う。事業承継に苦戦する経営者には、まずは自社の"存在価値"を突き詰めて考え、自らの価値基準とともに後継候補者に丁寧に伝えてほしい。それが問題解決の第一歩になると思う。

投稿者:主席研究員 川島康明|投稿日:2018年02月07日|

ページの先頭へ

入会お申し込み・資料請求について 入会および維持会員への切り換えなどに関するご照会・お問い合せは、総務部会員担当までご連絡ください。
また、入会資料の送付をご希望される方は、入会お申し込み・資料請求フォームよりお申し込みください。電話番号 054-250-8750 E-mail info@po.seri.or.jp 受付時間 9:00から17:00 祝日 土・日・祝除く入会お申し込み資料請求フォーム

  • 維持会員専用サイト

カテゴリー

最近の投稿

月別

  • サービス案内
  • 財団法人 静岡経済研究所 書籍のご案内
  • 静岡経済がわかるリンク集
  • 静岡県内事業者一覧
  • 研究社員紹介
  • マーケットプラザ