静岡県内の地域所得力の差異とその要因
-各市町の市町民所得の差異にみられる地域経済の特徴-
■本稿では、地域で得られる人口一人当たりの所得の大きさを”地域所得力”として、県内の地域間における所得力の差異の実態と、差異が発生する要因をみる。
■一人当たり市町民所得(個人だけでなく企業所得等を含む地域経済全体の所得水準)をみると、低位の市町は最も高い市町の5割弱の水準であり、明らかに大きな差異がみられる。
■所得差異を時系列でみると、上位市町の所得増加と下位市町の所得低迷の傾向が確認され、静岡県内の所得による市町の差異は明らかに拡大しているといえる。
■市町民所得の内訳に着目すると、地域間の差異は雇用者報酬よりも「一人当たり企業所得」の差異が大きく影響している。上位の市町では民間法人企業所得が高い傾向がみられ、大規模事業所の立地が背景にあると考えられる。
■市町民所得の差異が発生する要因を、「従業者比率」「労働生産性」「市町民分配率」の3つの構成要素に分解してみると、労働供給力の高さや大手企業の立地等による付加価値の高さ、域内分配力の高さなど、所得水準が高い市町でもその要因にはいくつかの違ったパターンがあることがわかる。
■所得水準を決める一つの要素である労働生産性についてみると、労働生産性が高い製造業などの産業構成比率が高い市町が上位に位置するなど、地域の産業構造が大きく影響している。また、同じ産業でも特定の地域の高効率な事業活動が労働生産性を高めている実態もある。
■地域所得力の差異は、地域の人口増加率だけでなく、人口維持に関連する有配偶率や出生率との関連性も見られ、地域単位で所得力の向上を図っていくことの重要性を示している。
■地域間の差異に対する評価は、最終的には地域に居住する人々の満足度や幸福度といった、個々人の心情に委ねられるものである。地域所得力の差異の発生要因については、より良い地域となるために解決すべき課題を発見・検討する手掛かりとして活用することが望まれる。
news_20181127_2.pdf